4つの代謝の考え方

生体内の四大代謝について、違った角度から捉えてみたい。

教科書では代謝は大きく異化と同化の二つに分けられるが、生理的現象を考えると、次の4つの代謝がお互いに相補的に作用し合っていると考えると理解しやすい。

 1)全ての代謝の基礎を成す領域「新陳代謝および基礎代謝領域」右下
 2)運動などによる代謝領域「エネルギー代謝」右上
 3)ホルモンや神経伝達物質のバランス領域「生物学的精神代謝」左下
 4)社会的ストレスなどの感受性領域「社会的精神代謝」左上

  

このうち、下段の2つ新陳代謝領域と生物学的精神代謝領域は、自分の意識で調整できない領域「無意識下コントロール領域」であり、上段の2つエネルギー代謝領域と社会的精神代謝領域は、自分の意識による調整が可能な領域「意識下コントロール領域」である。

  

右側の上下2つの領域は総代謝(総エネルギー代謝)と言われ、その2つの割合は、年齢によって次のように変化する。

上段:下段=3:7 20歳まで
     =2:8 40歳を過ぎると確実にここまで落ちます。
     =1:9 ほぼ動いていない状況 いつの間にか落ちる。

右上段のエネルギー代謝とは、エネルギーを使う為に自らジョギングや、コア・リズム(多くは有酸素)などをして消費するエネルギーや、仕事などをしている時の消費エネルギーである。つまり、自分でコントロール可能なエネルギー代謝である。

注目すべきは右下の領域、新陳代謝の領域である!
ATP(エネルギー)を産生(異化)して、無意識のうちに燃焼する領域であり、タンパク質を合成(同化)して、新たな酵素や新たな細胞を無意識に作り出している領域にあたる。
例えば、心臓、肺呼吸、脳の働き、胃腸の消化や肝臓の解毒など、生きていれば常に働いている部分がそれにあたる。当然、寝ている間もひたすら働き続けている。
この新陳代謝領域は自分でコントロールできません。停止させることも出来ません。生き続ける間、代謝つづけます。
この新陳代謝領域が全ての源になっており、生命の中枢領域がこの領域にあたる。
老化現象とは、この新陳代謝領域が衰えてくることを指す。

  

左下の領域、生物学的精神代謝領域は、
例えば、アドレナリン、セロトニン、ドーパミン、など、神経伝達物質やホルモンと言われるものは、脳内を刺激、または脳から刺激を受けて必要に応じて各分泌器官から分泌されるタンパク質である。
この代謝領域が乱れたり機能が劣りえてくると、次のような悪循環が生まれる。

自ら代謝コントロールできず分泌量が減る → 機能が落ちる。
  ↓
ホルモンバランスが崩れ、体調不良となり、病気になる
  ↓
薬を飲む
  ↓
薬により症状は抑えられるが、同時に新陳代謝が衰える
  ↓
脳は、本来の機能、指令、伝達などの代謝機能を負の調節へと勘違いする
  ↓
ホルモンや神経伝達物質などが不足または感受性が衰え、慢性的な様々な症状が出る
  
なぜ本来の分泌などが狂ってしまうのか?
それは、大きな原因の一つに右下の新陳代謝領域が正常に働かない事があげられる。
つまり、新陳代謝によって、ホルモンや神経伝達物質を産生し、また、古い細胞から新しい細胞を作り出し、入れ替えを行なっている。
細胞の寿命は部位や臓器によって違うが(肌なら28日、赤血球はおよそ120日、血小板なら短いもので30日、長いもので半年と言われている)全身のほぼ全ての細胞はこのように新陳代謝によって入れ替わり、ホルモンや神経伝達物質を作り出しています。

通常のATP産生は、解糖系の2ATPと、ミトコンドリア系の36ATP、この2系統がある。
ご覧の通りミトコンドリアにてほとんどのATPを作っていることになるが、この反応にはグリコーゲンから代謝されたアセチルCoAの他に、各種ビタミンが必須である。
また、『同化』の反応であるタンパク質合成にはアミノ酸と合成する酵素が必要となる。
酵素の働きを助けるのに補酵素であるビタミンも不可欠であり、『異化』にも『同化』にも絶対に必要とされるのが各種ビタミンである。

これらのことから、新陳代謝が衰える原因の一つはビタミン不足やタンパク質合成に必要な様々な栄養成分、合成に必要な指令が重要なポイントとなっている。
新陳代謝が衰える結果、どんなにエネルギー代謝をがんばって上げても痩せない!や、ホルモンバランスが崩れて生物学的精神代謝が下がって体調不良になっても改善されない。そして、社会的ストレスに晒され、精神的にイライラや、うつ状態に陥ることになる。

つまり、総エネルギー代謝のうち、運動エネルギー代謝を上げるよりも、効率の良い8割を担っている新陳代謝領域を向上できれば、総エネルギー代謝Upや、別章で掲げる免疫力のUpにつながる。
ここでもう一つ大事なことは、元気なミトコンドリアにはビタミンやミネラルが必要ですが、疲れてヨレヨレのミトコンドリアにはどんな栄養を与えても実は活発に働いてくれません。
この衰えたミトコンドリアを活性化させるには様々な命令が必要になる事を覚えておいて頂きたい。

例えば、コラーゲンを例にあげましょう。
コラーゲンを作るには、コラーゲン生成用に必要な情報(遺伝子の情報)が必要になり、その情報に従って、アミノ酸が誘導され、身体の中で(細胞の中で)充分な代謝によってコラーゲン(タンパク質)が作られます。
つまり、タンパク質を作る(同化)には、その作る物質の情報を発現する刺激が不可欠ということである。

   

生命の源はタンパク質
1日に必要なタンパク質の量は平均で約250gと言われている。
食事で摂取できる量はおおよそ約70g、残りの約180gは体内で再利用されて作られている。つまり、古くなった細胞やタンパク質を酵素などにより分解してアミノ酸を作り出し再利用している。これもコントロールは出来ない無意識下コントロール領域である。
『老化』(上述の新陳代謝領域の低下)により、再利用する分解機能が弱くなっていき、不必要なタンパク質などが排除出来なくなると、充分なタンパク質を補えないだけでなく、同化が衰え、さらには加齢により食事からの摂取するタンパク質は取りにくくなり、タンパク質摂取量が足りなくなっていく。
つまり、摂取および再利用するタンパク質量の減少からも新陳代謝に狂いが生じ、様々な不定愁訴、そして病気の始まりの引き金へとなっていると考えられる。

話はまだまだ続きますが・・・一旦まとめます。

まとめ ー代謝の基本的考え方ー

1)非コントロール領域である新陳代謝の衰えが全ての老化現象の始まりであり、生活習慣病の始まりである。
2)よって、この新陳代謝領域を活性化することが、老化予防であり、病気の予防につながる。
3)そのためには、ミトコンドリアの働きを上げることが大事になってくる。
4)ミトコンドリアの機能を上げるには、必要なタンパク質、ビタミン、刺激(運動や遺伝子の働き)が必須となる。

さて、皆さんはここまでで何をすればいいのか・・?分かるでしょうか・・?